どこでリスクをとるか

どこでリスクをとるか

この記事は移転前のブログで2012年10月3日に書いたものです。

9月30日に台風17号が日本を横断(縦断?)しました。速度が速く、あっという間に東の方へ抜けて行きましたが、30日の夜は雨風が激しく、地元の市役所も外出自粛の放送をしていました。

しかし私はというと、ピザ屋でアルバイトをしているため、身の危険を感じつつ嵐の中ピザを配達していました。
バイクで風に煽られながら、ピザを買う人はどこにコストを払っているんだろうという疑問がわきました。

晴れの時の売上を1とすると、だいたい同条件の場合

晴れ :1
降雨 :1.2
嵐・雪:1.5

程度の売上になります。、また、季節商品に近いので夏と冬では2倍弱の差があります。

雪>嵐≧冬季降雨>……>夏季晴天>春秋晴天

となります。

ひと目で消費者の「移動コスト」に比例して売上が伸びていることが分かります。デリバリーという業態なので、移動コストがないというのをウリにしているので当然といえば当然です。

たとえば、台風が直撃している中、わざわざ出かけて外食をしようと思いませんよね。競争相手は『冷蔵庫にあるもので済ませよっか』です。夏の暑い日なら、冷房の効いた店内で冷たいものを食べたくなるので、家で暑いピザを頼もうとは思わなくなりますね。電車や車があれば移動中も涼しいです。


問題にしたいのは、値段設定です。供給側と需要側ともに、いくらくらいなら多少高値でも移動コストのかからないデリバリーを使おうと思うのでしょうか。
ここでは例としてピザで調べてみました。

主要なピザ屋のMサイズ(2~3人前)のピザはだいたい2000~2500円程度でした。一人あたりの料金は700~1200円くらいです。
上の売上から考えると、100人の消費者がいれば

67人はいつでも食べたいときにピザを頼む
12人は雨が降って出かけたくないときにピザを頼む
20人は嵐や雪などの条件がないとピザを頼まない

非常に簡略化して表したので誤差はありますし、アルバイト一個人の勝手な考えだとは重々承知していますが、それでも言いたいことがあります。「一番下の20人は配達員の命を軽視しすぎじゃないか」と。「700~1200円を払ってやるから危険な嵐の中でも俺様のためにピザを運んでこい!」です。正確に言うと「雇い主側が配達員の命を軽視しすぎじゃないか」と。

実際に先の台風のときはすごい経験をしました。あちこちに打ち捨てられたビニール傘の残骸が風に舞い、空き缶が空を飛び、バイクは倒れヘルメットも吹き飛びました。幸いにして私の店舗はけが人が出る前に営業を中止しました。

業態に関わらず飲食業というのは間違った方向への努力が賛美される異様な空間だと感じています。デリバリーでいえば、企業が最優先すべきは従業員の安全であり、事故を減らすこと。その上での売上であると思います。そして、危険な天候のときに営業を中止しても利益を十分出せるように、上記の67人にあたるベース顧客を増やすマーケティングを行うことではないでしょうか。
しかし実態はどこもギリギリで、危険な天候でもギリギリまで営業を続けて1円でも売上を伸ばそうとしています。そうしないと競争に負けてしまうから。たまたま大事にならなければいいものの、判断ミスで死亡事故などを誘発してしまえば、その店舗・企業は即アウトです。

危険な天候の時にはできるだけ事故の可能性(注文件数)を減らし、消費者からそれ相応の割増料金(件数を減らしたことによる利益の減少幅)をとってもいいのではないでしょうか?システム的にもなかなか難しいでしょうし、割増によるベース顧客減を恐れているのかもしれません。


対案を出せと言われても、具体性のある現実的な案をすぐに思いつくわけないですが、この業界では仕方のないことと言って思考を停止させてしまえばそれ以上の発展はありません。どうか思考を止めないで健全な方向へ競争が進むことを祈ります。