新聞の行く末は…?

新聞の行く末は…?

この記事は移転前のブログで2012年11月1日に書いたものです。

新聞、テレビ、雑誌、ラジオやインターネットなど「情報を発信し、それを受け手に伝えるもの」をメディアと呼びます。
では、メディアにとって一番大事なものはなんでしょうか?


おそらく多くの人が「情報の信頼性」だと答えると思います。


確かに信頼性は大事です。ただ、僕は信頼性と同じくらい「広く知られていないことを知らしめる」ということも、メディアの大切な役割ではないかと考えています。

例えば2011年の東日本大震災のとき、震災後数日はどの局も「○○で△△人の遺体が~」とか「被害を受けた□□地区の状況は~」などと同じ映像を繰り返し、同じような報道ばかりしていたと記憶しています。情報が入ってこないのか、同じものを何回も何回も、うんざりするほど見ました。

また原発事故の問題に関しては、政府や東電のプレスリリースをそのまま記事にしたものしか見ていません。緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」についても、仮定データで計算していたにも関わらずSPEEDIのことが記事にされたのは最速で3月15日。予測値を非公開としたことを非難する記事がリリースされたのは、実に震災から11日後のことでした。


こういったことから、既存メディアに対する不信感が増していたのですが、先日『「本当のこと」を伝えない日本の新聞-著マーティン・ファクラー』を読んだことで、少なくとも新聞に関しては「終わったな」と思いました。


一番印象的だったのが、「新聞社は権力の監視を自身の役目だと思い込んでいるが、記者たちは権力(政治家や官僚)と同じルーツ(有名国立大や私立大からの新卒採用)を持つ者で固められているため、権力寄りの価値観を持っている」ということ。それと『記者クラブ制度』(さらに55年体制などの要因)が相まって、今のような「プレスリリースで固められた記事」「記者の意図が感じられない記事」が増えていったのではないでしょうか。



それはさておき、東電の原発事故に対する報道などで、既存メディアに対する不信感が募ることは、とてもいい事だと思います。

・政府に対する不信感
・既存メディアに対する不信感
・新卒一括採用に対する不信感
・大企業の業績不振(パナソニックは7650億円の赤字らしいですね)

ネット上を見ていると、よく上記のような記事(この場合は個人ブログも含む)を見かけます。このような事柄は「高度成長期に力を発揮したものたち」です。高度成長・バブルが終わって20年。ようやく社会が今必要とされている方向へシフトしていると考えると、とてもいいことではないでしょうか。遅すぎたとはいえ、こういう変化が起こり始めているということは日本もまだまだ捨てたもんではないですね。上手くシフトするのが先か、日本国債が暴落するのが先かのチキンレースかもしれませんがね。

新聞社に関しては、残された道はマーティン・ファクラーさんがおっしゃる「インターネットを上手く活用しつつ、現存の記者クラブから抜け出す」か、もしくは「新聞自体は先細り状態のまま、他の分野で食っていく」か、あるいは「そのまま衰退していく」ではないでしょうか。まあ、新聞業界は消費税増税に対し新聞を軽減税率にねじ込もうとしていることを考えれば、どうなるかは………ねぇ。

超優良企業だった東電がたったひとつの事故でああなったように、今の若い世代が新聞社に入ったところで逃げ切れる保証はどこにもありませんよ。

11月3日追記

先日の橋下徹大阪市長の血脈問題の記事に対する謝罪文が週刊朝日に掲載されました。新聞ではないけど、新聞社のグループ会社の雑誌メディアで、2ページにも渡り謝罪文が掲載されたようです(実物は見ていません)。その謝罪文に対し、岩見隆夫氏(毎日新聞客員編集委員)は

しかし、釈然としない。『週朝』は橋下さんの緊急連載をスタートさせた翌週、十一月二日号の冒頭二ページを割いて、河畠大四編集長名の〈おわびします〉の一文を載せた。橋下さん側が要求したのかどうかは知らないが、こんな破格の扱いをした謝罪文を見るのは初めてだ。

と述べています。

子会社とはいえ、同じく日本を代表する朝日新聞グループの企業が大規模な謝罪文を掲載したことが、新聞社の「仲間」として屈辱的だったのでしょうか。大々的に問題のある報道をしてしまったのなら、大々的に謝罪記事を載せるのは当然のことだと思いますが、新聞社に勤める人にとっては「記事は書いて人気がとれたらOK。別に問題があっても謝罪はしなくていい」という思想がはびこっているようにも思えます。

小さいころは誰しも「悪いことをしたら謝りなさい」と教えられるのに、どうやらこの業界では「悪いことをされたから謝ってもらえるなんて、謝罪された方は光栄に思え」らしいです。やれやれ。

<サンデー時評>橋下市長は裁判をすべきだった

「本当のこと」を伝えない日本の新聞 (双葉新書)

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