縦割り?横断的?

行政組織を批判する定番のひとつとして「縦割り行政」というものがありますね。それぞれの所管がそれぞれ権限を持っているから、横の繋がりを持とうとせず、情報を集め、権限とカネを独占しようとする。サービスの受益者はたらい回しにされ、手続きが七面倒臭くなる。とまあ、そんな感じでしょうか。


でもね。縦割り解消しろなんて無理な話なんですよ。

基本的に窓口業務はスペシャリスト集団であるべきなんですよね。市民税に関することならなんでも任せろの集団、保険年金関係を任せろの集団、生活保護関係は任せろの集団。それぞれ制度が複雑すぎて、他分野に渡って知識を蓄えようとしたら何年かかることか……。

もし横断的な組織を作ろうとしたら、『すべての窓口ですべての申請を受け付けます。だけど調べるのに時間かかるから長時間待ってね☆』なんていう結果になってしまうかもしれません。


では、すべての所管で縦割りじゃないといけないのでしょうか?そうは思いません。

例えばまちおこしのイベントとか、未利用土地の開発とか、いわゆる事業系と呼ばれる部署が行っている仕事は縦割りだと都合が悪くなってしまいます。

ある未利用の土地があって、そこで何か有効活用できないか?という問題があったら、ある部署ではスポーツ施設を作りたいと言い、ある部署では歴史を展示する場にしたいと言い、ある部署では農地にしようと言い、ある部署では民間に払い下げようと言う。まず、どの方向性で行うかを決めるだけで、ある種戦いになってしまい、無駄な労力が消費されてしまいます。

こういった事業系の仕事に限り、「横断的なチーム」は力を発揮するでしょう。

そしてチームの構成に入るとき、部長級や課長級を筆頭にチームが造られることが多いと思います。これも落とし穴ですね。課長の仕事はその課の長として課員を監督すること、部長の仕事はその部の長として部員を監督すること。横断的なチームは部署に関係なく構成されるわけですから、本来の仕事から逸脱してしまいます。横断的なチームを作るときは、部や課に大きな権限を持たない、多くの場合は平社員のような立場の中からリーダーやメンバーが選ばれるべきです。もちろん、課長や部長との折衝も必要になってくるでしょうから、ある程度経験を積んだ胆力のある人でないといけませんが。


こうやって集められたチームは事業が終わるごとに解散し、また別の事業を別のメンバーで行う。そうやって既得権益化しない仕組みを作って、ようやく横断的なチームが機能するわけです。実行部隊であるチームが作られては消えるわけですから、全体の方向性を決めるチーム(これは解散しない。また全ての所管から独立する)も設置しなくてはいけませんね。


まとめると、縦割りの弊害をなくすために横断的なチームを作る場合は、

1.縦割りじゃないといけない業務と、そうでない業務の見極めをし
2.課長や部長といった所管に大きな影響力を持つ人間を中核に据えずに
3.事業ごとに作っては解散するような仕組みを取り入れた

組織づくりをしなくてはいけません。


…と、ここまで読んだ皆さんなら気付いていると思います。これってクラウドソーシングと根本は同じだよね。